先日おじゃました家は、素晴らしい庭のある家でした。右側にはかなり古いけど落ち着いた良い感じの茶室のような建物もありました。 その家のおばあさんに聞いてみると、「以前は茶室に使っていたんですけど、今では物置に使っていて、しかもぜんぜん手入れしていないから部分的には腐れかかってるんですよ。だから近じか解体するんです。もったいないくらい良い茶室だったんですけどね。」 この茶室は、築80年の年代物で、実は一番丁のKというお店の奥にあった茶室を戦前譲ってもらった物だという。一番丁は今では想像できないだろうが、お店があってその奥に自宅があり、さらにその奥に庭や茶室などがあるお屋敷を形成していた。 この茶室はとても腕の良い大工さんが建てたもので、どうしてなのかは聞かなかったが、この場所にその大工さんの手によって移築したらしいのだ。 おばあさんはさらに続ける。「あ、そうそう、古いお雛様もあの茶室に箱に入ってるわね。今度茶室を解体する前に、子供たちや孫たちがみんな来て、ま、なんていうか茶室をしのぶ会をやるんですよ。そのときあのお雛様も日の目を見るわね。」
このおばあさんは、戦後の昭和21年にこの家に嫁いで来た。だんなさんはビルマの戦線に出征し戦友たちがばたばたと死んでいく中で、九死に一生を得て帰ってきた人だという。 ここの家はある大きな卸屋さんで最大時は、80人ぐらいの従業員を使っていたという。その大店をおばあさんが切り盛りしてきたのだ。 「もう年がら年中忙しく、ただ無我夢中で働きづくめだったわね。全国から見習いの手代が住み込みでこの家にいたのよ。その人たちの食事からだから大変だったけどよくやったわね今思うと。」
そろそろ帰ろうと思い家を出ると、なぜかおばあさんも一緒に家を出て、庭の方に来た。そして二人で茶室を眺めていた。周りの木々の中に、古い茶室はひっそりと佇んでいた。
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