| 制約があるからこそ創造性が生まれる |
最近、テレビでおもしろいと思うのは、NHKの「プロフェッショナル」である。各界で活躍するプロの特集をする番組である。先日見たプロが「建築家・隈 研吾」である。彼の根本思想である「負ける建築」という考え方がとてもおもしろかったので、今日は建築家・隈 研吾を紹介することにしよう。
隈研吾はある時期までは、前衛的で超モダンな新進気鋭の建築家として名を馳せていた。ところが彼にとって自信作であった、ある作品が酷評を受けショックを受け、それまでの自信が揺らいでしまう。そんな自信喪失していた時期に、ある辺鄙な村からオファーがあった。昭和初期に作られた村営演芸場の改修工事である。日本を代表する建築家にとってはあまりにも小さな仕事であった。ところが現場に足を踏み入れて、あまりにも見事な大型木造建築の素晴らしさに圧倒されてしまう。材料にも事欠くである筈のその当時に、名も無き大工さんたちが苦労した跡がわかるのだった。地元の材料を使い、曲がっている木材を多用し、かといって構造的にも強い演芸場を使っていたのだ。しかし、外から見た演芸場は、その村の雰囲気とマッチして慎ましく、決して「偉い建築物」として主張していない。ところが中に入ると圧倒的な大空間を作っており、村人唯一の娯楽であった「演芸の出し物」をしっかりと演出する構造になっていたのだ。
このときから隈研吾は「主張する建築」ではなく、環境にマッチした建築、彼なりの言い方でいえば「負ける建築」を模索することになる。 「負ける建築」をより根本にさかのぼると次の思想にたどり着いた。「制約があるからこそ創造性が生まれる」。この村の大工さんたちの苦闘の跡を見ていくうちにひらめいた考えであった。 テレビは彼の最近の代表作を見せながらこの「負ける建築」の表現をたどっていく。 棚田で有名な村から頼まれた「憩いのレストハウス」。彼は棚田の環境を壊すことなく、逆に棚田の風景にマッチングするプランを練る。映像は完成したレストハウスでくつろぐ村民にインタビューしていく。すると村民は眼下に見下ろす美しい棚田を見ながら「ここに来るとなんか懐かしい感じもするし、でも都会的でもあるし、すごく気持ちいい。」と話す。 「負ける建築」の真骨頂である。棚田という制約を見事に取り入れた作品の完成だった。 「制約があるからこそ創造性が生まれる」、なんて美しい言葉なんだろう。
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