| ホウ雪崩 |
二日前に、ニュースで富山県・立山連邦での表層雪崩を報じていた。今年も各地で雪崩の被害が起きているようだが、今日は、最近読んだ本で知った、表層雪崩よりはるかに恐ろしい「ホウ雪崩」について紹介していこう。
「高熱隧道」吉村昭著で知ったのが「ホウ雪崩」だ。この本の趣旨は昭和11年から15年までの5年間にかけての黒部第三ダムを苦労の末に完成させた偉業と労働者たちの格闘ぶりを描いた作品だ。とりわけ資材を運ぶための隧道を掘るとき、なんと摂氏160度まで温度が上がり、たくさんの死者を出しながら完成させたのだ。この高熱隧道を掘る苦闘ぶりがメインテーマである。 しかし私が最も印象深かったのは、「ホウ雪崩」というあまり聞いたことが無い現象が起きた部分である。 高熱隧道を掘るために労働者たちの宿舎を山の中に建てたのだが建てる際に絶対に雪崩が起きない地点を見定めて学術研究者たちの助言に基づき建てた。ところが悲劇は昭和13年に起きた。 遠くで恐ろしいほどの爆発音が聞こえたので、労働者たち百人が泊まる五階建ての宿舎のほうへ赴いた主人公は驚きで体が硬直してしまう。 なんと五階建ての鉄筋コンクリートが1階部分だけを残して完全になくなっているのだ。雪崩かと思ったが、どうもおかしい。普通の雪崩なら木々がずたずたに折れ、押しつぶされたり壊れた建物も近くにあるはずだ。ところが警察隊や捜索隊など合計300名が捜索してもいっこうに、消えた宿舎が見つからないのだ。さらに捜索範囲を広げ数百m下流のほうまで捜索したがやはり見つからない。「いったい、宿舎はどこに消えたのか。何が起こったのか。」主人公たちは呆然としながらも専門家に鑑定してもらう。その結果、専門家はある仮説を述べるのだ。 以前スイスで起きた驚くべき雪崩「ホウ雪崩」ではないのかと。スイスで起きたホウ雪崩では一つの村が超爆風を受けて村ごと数キロ先に吹き飛ばされたのだ。 この仮説を受けて更なる捜索を開始すると案の定1k先の山の壁にその宿舎の残骸が吹き飛ばされていた。ホウ雪崩は異常に発達した雪庇の傾斜に新雪が降り積もったときに起き易いそうだが、ものすごい爆風を伴うのが特徴だそうだ。このホウ雪崩は日本でもまれにおきるそうだ。この結果宿舎にいた全員が死亡した。こうして高熱隧道での死者だけでなくホウ雪崩というめったに起きない災害によって工事は遅れに遅れた。しかし戦争勝利のためにどうしても電力需要を満たすべく技術者も労働者も一丸となって工事を再開する。さまざまな困難を乗り越え、黒部第三ダムはこうして完成した。昭和15年のことである。
私の本業のホームページ:不動産法コンサル・サロン http://www.estate-consultant.jp
|
|
|
|