最近、改めて読んだ本に「戊辰の風雪」がある。今日はこの本の著者のことを書こう。この本の著者は私の恩人であり、深く尊敬している前河北新報社専務の小野昌和氏である。小野さんは昨年の夏に他界した。その半年前にがんで患い入院したが、治療の甲斐なく亡くなったのだ。小野さんは酒田出身であり、庄内藩の家老の末裔と聞いた。酒が好きでほろ酔い機嫌になると、戊辰戦争の話をした。それも熱を込めて「薩摩・長州は許しがたい」と。それほど、庄内藩のことを、そして東北人のことをこよなく愛していた。東北人は戊辰戦争の影をずうーと引きずっているんだ。が口癖だった。私はこの本で東北人のすごさを知った。
書き出しはこうである。「近代東北の原点は戊辰戦争にある。日本の舵は薩摩・長州が握ることになったが、奥羽皆敵の地の名誉挽回を密かに心に決めた人たちがいた。南部藩主だった南部家の当主、南部利祥(としなが)伯爵もその一人である。天皇を守るこの騎兵連隊の中尉、日露戦争に出征、奉天の会戦で井口嶺の雪に23歳の命を散らした。彼は陣中から家令にあて「ドンと弾丸が当たれば利祥は無くなれども南部家は無くならない。我 皇室と共に不滅である」と手紙を出していた。旧南部藩士は殿様の戦死に「これで賊軍の汚名をそそぐことができた」と、皆、涙を流したという。
全編この書き出しのように、東北人、それも東北出身の軍人を中心とした偉人たちに焦点を当て、彼らへの尊敬と愛情を綴った本なのである。一戸兵衛陸軍大将、出羽重遠海軍大将、石原莞爾陸軍中将、板垣征四郎陸軍大将、南雲忠一海軍大将、東條英機陸軍大将、今村均陸軍大将、及川古志郎海軍大将、・・・・、おびただしい数の陸軍・海軍の中心的な人材を東北は輩出していたのだ。それ以外にも鶴岡出身の思想家・大川周明なども紹介されている。「戊辰の風雪」はあまりにも過酷な運命にもめげずにいさぎよく戦い散って行った東北人への愛情が満ち溢れている秀作である。
死の数ヶ月前に小野さんが書いた詩が病室に残されていた。 死を覚悟した遺書のようでもある。「病みたる虎は秘かに草に臥し 命尽きるを待つ 願わくば 吾が身、土に還りし時 降る雨は香しき清酒となり 舞う雪は 白く濁れるどぶろくとなりて 墓所に注がんことを」
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