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良ちんの『日常を旅するブログ』
土地家屋調査士 斎藤良一が、旅や映画、読書等日常をつれづれなるままに書き綴るブログ
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耳登記とマッカーサーの呪文

先日、先輩調査士から「耳登記」という聞きなれない登記の説明を聞く機会を得ました。
とても興味深い話だったので、今日はこの話について書くことにしよう。

登記簿の所有権の欄に次のような記載を見ることがあります。
「自作農創設特別措置法による取得・・・」

この文字が出てくるのは、戦後のGHQによる農地改革に基づく法律、自作農創設特別措置法によるものです。
第二次農地改革により、不在地主所有地の全貸付地と在村地主の貸付地の一定割合を越える農地などを、国が強制買収し、この農地などを小作人に超低額で売り渡した政策です。
この極端な政策によって地主制といわれる長く続いたものが解体されたのです。

この場合、国が強制的に地主の農地を買収するとき、本来であれば、登記簿の所有者欄に正規の手続きをして「所有者 国」と登記すべきです。
ところが、大量の件数であり、しかも超短期間でこの政策を推し進めたかったために、正規の手続きではない方法をとりました。
それが「耳登記」です。
登記簿の欄外の部分に「自作農創設による買収登記嘱託綴込帳第○冊第○丁」と記載して国への所有権移転登記に替えたのです。
もちろんこのあとには、国から小作人への売り渡しに基づく所有権移転登記が正規の手続きにより甲区欄に行われました。

この国への強制登記は急いでいたため、欄外への登記、すなわち俗称「耳登記」が大量にかつスピーディーに行われたわけです。この耳登記の現物を見せられながらの解説はとても興味を持ちました、と同時にある地権者さんのことを思い出したのです。

その地権者さんとは仙北地方のある町でお会いしました。
そこの家は古いのですが、門がすごいのです。
そこで、打ち合わせが終わった後に、その門の事を聞いてみました。
するとやはりというべきか、そこの家がかつては豪農であったことを語るのでした。戦後の並々ならぬ苦労話も含めて。
戦前は大勢の小作人を抱える大農家だったということでした。そして戦後の農地改革によってかなりの農地を手放しました。

地権者さんは少しばかりいいずらそうにしながらも、農地改革時代の、なんともいいようのない恐怖感を語るのでした。
というのは地権者さんは、昭和15年生まれであり、終戦時は、まだ5歳でした。
ですから農地改革も何もかもよくはわからなかったはずです。
だけど、お父さんをはじめ家の人たちのただならぬ気配、焦燥感に子供だった地権者さんは気づいていきます。
「自分の家が大変な状態であることを」

さらには日曜日になると、自分の家のものだった山や原野などに、知らない人たちが勝手にどんどん入ってきて、耕したり小屋を建てていったりしたため、どんどん自分のところの土地がいろんな人にとられていくことが実感としてわかっていきました。
さらには、お父さんやお母さんがラジオから流れる「マッカーサーがどうのこうの・・・」という音声を聞きながら真剣な表情をしているのを見て、ただならぬ気配を感じていたそうです。

子供心に、自分ちの土地が全部取られて、しまいにはお父さんがどこかに連れて行かれるのではないかと心配したそうです。
だから当時、マッカーサーという言葉を聴いただけでとてつもない恐怖にかられたそうです。

当時の日本人にとって、農地というのは最も価値のあるものであり生命線だったはずです。その農地のほとんどを突然、マッカーサー指令とやらにとられてしまった衝撃は計り知れないものだったでしょう。
ましてやお父さんやお母さんが深刻な顔をして悩む姿を見ていた子供としては耐えられなかったものでしょう。

この当時の悔しかった気持ちも地権者さんは吐露してくれました。
農地改革が終わってから地権者さんのお父さんはものすごいがんばりで働いたそうです。あとを継いだ地権者さんも当時の悔しさを胸に秘め働きに働きました。
そして少しずつ農地をまた買い集め、農業にがんばっているそうです。

私は登記簿で「自作農創設・・」という文字を事務的にしか見てこなかったけど、その文字の背後にこんなにすごいドラマがあったんだね。

私の本業のホームページ 不動産法コンサル・サロン http://www.estate-consultant.jp


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【2010/08/28 10:26】 | 日記 | Author:斎藤良一 E-mail:info@estate-consultant.jp


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